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1年間、重度皮膚病の子のお預かりケアで気づいたこと。ウエスティのひなちゃん、回復の軌跡

サロンケア

ティアラにご来店されたお客様の多くが見たことのあるこの子。
ウエスティの“ひなちゃん”と言います!
まん丸キラキラお目目と口角が上がって笑顔がチャームポイントです☆
吠え癖があってびっくりさせてしまうこともありますが(笑)、本当は人が大好きで、とってもお利口さんです。

 

そんな“ひなちゃん”との日々は、私たちにとって忘れられない経験になりました。
去年の夏に再会したとき、皮膚病に苦しみ、感情さえも失ってしまったように見えたひなちゃん。
そこから約1年間、少しずつ元気を取り戻し、笑顔を見せてくれるようになるまでの変化を一緒に見守ることができました。

 

今回はそんなひなちゃんの皮膚病ケアの軌跡をご紹介しようと思います。

 

来店時のひなちゃんの姿

先代のわんちゃんの時から当店をご利用いただいている方が、新しく迎えられたのがひなちゃん。
パピーの時から当店に来てくれていました。
ただ、ご利用の間隔がしばしば空いてしまうこと多く、ちょっとずつお肌のコンディションが悪化してしまいました。

 

そんなある時、約1年ぶりに来店したひなちゃんは、全身の毛が抜け落ち、赤みを帯びた皮膚がむき出しになっていたのです。

炭化したフケがこびりつき、少し触れるだけで黒い粉のようなフケがボロボロと落ちてしまう。
乾燥は極限まで進み、逆に生傷の部分はじっとりと湿って熱を持っていました。
鼻をつく皮膚病特有の匂いに、重度の外耳炎による耳垢の匂いも混ざっていました。

 

動きはゆっくり。
表情は乏しく、目に力がなく感情が閉ざされてしまったように見えました。

 

それでも、尻尾だけは小さく揺れていて、人に触れ合えることを少し喜んでくれていたのだと思います。

 

お店としての判断

ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(通称ウエスティー)は、本来とても活発で好奇心旺盛な犬種です。
しかし、小型犬の中でも特に運動量が多く、皮膚病のリスクも高いと言われています。
しかし、ひなちゃんは高齢の飼い主さまがお一人で暮らしている環境で、日常的なケアが十分に行き届かない状況でした。

 

「このままでは命に関わるかもしれない」
そう判断し、日中だけでもお預かりして、集中的にケアさせていただくことをご提案しました。

 

ケアの工程と理由

まずは通院を代行し、適切な診察と治療を受けていただきました。
まずは、とにもかくにも、痒みと痛みを抑えることが最優先で、ステロイドとアレルギー抑制薬を投与。

 

そして、皮膚病のケアは投薬に加え、「食事管理」「清潔」「ストレス対策」の3本柱が大切です。

 

投薬と同時に、食事改善のスタートです。
それまでの食事内容ははっきり分かりませんでしたが、やせ細った体格から見ても明らかに不適切な状態でした。
獣医さんのすすめで、ひとまずアレルギー対策フードの定番であるロイヤルカナンの「アミノペプチドフォーミュラ」に切り替え、腸内と栄養の基礎を整えることから始めました。

 

次に行ったのは、身体の清潔を保ってあげること。
検査の結果、ひなちゃんの皮膚にはマラセチア菌が多く、もともとのアトピー性皮膚炎と相まって、強烈な痒みを引き起こす原因となっていたようです。
そこで、3日に1度の薬用シャンプー(マラセブ)で殺菌。
その際、血流が促進され痒みが強まらないようシャンプーは冷水に近い温度で行います。
仕上げの保湿も忘れずに!

 

本来は風を当てながらブラッシングを行いますが、ひなちゃんの状態では自然乾燥を中心に行いました。
風が当たるだけでも痒がってしまうためです。

 

そして、ストレスケア。
ここがお預かりケアで、効果を一番発揮できるポイントになります。
自由に動ける空間と、たくさんの人にかまってもらえる時間によって、精神的な充実感をもたらしてあげられます。

 

本当はたくさんお外にも連れ出してあげたかったですが、お預かりを開始した時期は真夏で、日中は歩かせられませんでした。
しかし、お家でほとんど運動できていなかったひなちゃんにとって、お店の中を自由に歩き回るだけでも十分な運動になっていたようです。

 

涼しくなるころには筋力も体力も戻り、お散歩デビュー!
ちょっとずつ坂道を歩いたり、小走りを取り入れたお散歩へと進めました。

 

変化の記録

【ケアを始めて1ヶ月後】

うっすらと産毛が生え始めました。

 

【2~3か月後】

さらに毛が生えてきました!
皮膚の硬さや赤みがだいぶ収まり、やわらかい肌に再生してきました。

 

【半年後】

毛がしっかりと揃い、感情表現も豊かになってきました。
名前を呼ぶと後ろ足で立ち上がり、目をキラキラさせて見つめてくれるように。
人の気配がすると寝ていてもすぐに起き上がり、「遊んで!」とアピールするほどになりました。

 

【10ヶ月後】

毛並みもきれいに揃い、皮膚の状態も安定。
痒みは大幅に減りましたが、元気になりすぎて吠え癖や嫉妬心が出てしまうくらい。
現在はお預かりの頻度を週2〜3日に減らしながら、症状が悪化しないように調整しています。

 

【お散歩】

涼しくなって、お散歩に行けるようになった時の様子。

地面を踏みしめる感覚、草や土の匂い、風を感じること、日光を浴びること。
生き物にとって、何より大事なセラピーになります。

 

この経験からわかったこと

薬や食事だけでは、重度の皮膚病はなかなか改善しません。
環境」と「人との時間」こそ、最大の治療薬だと感じました。

 

犬は理性で痒みを我慢することができません。
だからこそ、痒みから意識をそらす工夫が必要です。
運動やコミュニケーションでエネルギーを発散することで、ストレスによるかき壊しや舐め壊しは確実に減ります。

 

今日からお家できるワンポイントケア

  1. 【お散歩時間を少し増やす】【坂道や速度の変化】【コースを変える】などの小さな工夫
  2. 【ノーズワーク】や【宝探しゲーム】で、室内でも夢中になる時間をつくる
  3. ガムやアキレスなどの長く噛み続けられるトリーツをあげる。《噛む》ことはストレス発散に繋がります
  4. 【犬の幼稚園】【犬のデイケア】などを利用し、長時間のお留守番を避ける
  5. 皮膚チェックの習慣化。毛を分けて皮膚の色・ベタつき・匂いを確認。いつもと違う変化に早めに気づくことが大切です

 

最後に

ひなちゃんは、治療だけでなく、環境づくり人との触れ合いでここまで回復することができました。
もし今、愛犬ちゃんが皮膚病で悩んでいるなら、治療以外にも目を向けてみましょう。
時間も労力もかかってしまいますが、その先には確かな変化が待っています!

一緒に過ごす時間」を増やすことこそ、愛犬ちゃんに与えられる最高の治療だと思います。

もし、愛犬さんの皮膚病でお悩みであれば、お気軽にご相談ください!

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