実は仕上がりに直結する“耳の皮脂カス”問題
上の画像のように、耳のフチや付け根に白いカスみたいな皮脂が固まっている子。
トリミング中によく見かける。
一見すると「大したことない汚れ」に見えるのだが、
実はこれ、シャンプーやブローの仕上がりにめちゃくちゃ影響する。
*皮脂が毛穴を塞いで、シャンプーの泡立ちが悪くなる
*ブローしても毛が根元から立ち上がらない
*見た目のツヤ感も半減する
皮脂が毛穴を塞ぐことで、シャンプー剤が毛根や皮膚に届きにくくなり、汚れが十分に落ちないこともしばしばある。
その結果、被毛が重くなり、ブローしてもフワッとした立ち上がりが得られず、本来持っている毛のツヤも損なわれてしまうというわけだ。
しかも厄介なのは、飼い主さんが気付きにくい症状であること。
「耳の内側ならまだしも、フチなんて見たことない!」って人、かなり多いはず。
特に、耳が垂れている犬種や被毛が長い犬種では、普段の生活の中で耳のフチの状態を把握しにくい。
耳の皮脂の正体
さて、この白いカスの正体は一体何か?
答えは「皮脂」と「角質」が混ざり、摩擦などの刺激で剥がれたものだ。
耳のフチって、体の中でも皮脂腺が多い場所。
さらに、寝床のベッドや床との摩擦、首振り、かきかき行動…
いろんな刺激が重なることで、皮脂が乾いて白い粉状の固まりになる。
特に、耳を頻繁に掻く、頭を振る、床や家具に耳をこすりつけるといった行動が多い子は、摩擦による汚れが蓄積しやすい傾向がある。
放っておくとどうなる?
この皮脂カス、放置しているとじわじわ影響が出てきてしまう。
*皮膚が硬くゴワつく
*色素沈着して黒ずむ
*血流が悪くなり、耳先が冷たくなる
*慢性的な乾燥炎症やかゆみにつながる
皮脂や汚れが酸化し、そこに炎症が起こることがある。
その炎症が慢性化すると、メラニン色素の生成が促進され、皮膚が徐々に黒ずんでしまう。
これは、人間のシミやくすみと同じような原理だ。
最悪の場合、「耳介辺縁壊死症(耳先が壊死する病気)」のリスクも。
ちょっと大げさに聞こえるかもしれないが、仕組みは以下の通り。
ヨーキー、ワイヤーダックス、ピンシャー、パグ、フレンチブルドッグなどに多い印象です。
これは、皮膚の健康と血流がいかに密接に関わっているかを示しているいい例だ。
小さな変化であったとしても、それに気づかず見逃してしまうと、後々大きなトラブルになってしまうかもしれない。
実はこれ、シャンプーでは落とせない
「じゃあガッツリ洗わなくては!」と思ったそこのあなた。
残念だが、それ逆効果である!
確かに、力任せに洗えば落とせる。
しかしそれは、私たちが頭皮をゴシゴシ洗い過ぎてフケ地獄になるのと同じ原理でもある。
強く擦ることで皮膚のバリア機能が傷つき、かえって皮脂腺が刺激されて皮脂の過剰分泌を引き起こしたり、皮膚の炎症を悪化させてしまう。
なので私たちは、強い皮脂汚れを落とす際、クレンジングオイルを使います。
以下、解説の動画です。
クレンジングオイルの原理は「油は油で落とす」
メイク落としと同じ仕組み。
皮脂の主成分は油なので、同じ油のクレンジングオイルは、いわば仲間だ。
ペタペタとなじませるだけで、皮脂汚れを溶かして浮かせることができる優れものだ。
さらに、そして水と混ざることで乳化し、吸着させた汚れと一緒にサッと流れていく。
犬のデリケートな皮膚に余計な大きな負担をかけず、汚れだけをオフできるというわけだ。
お店でのケア方法
当店では、以下の手順でスキンケアしている。
→ 皮脂カスの溜まり具合や皮膚の状態をチェック
② クレンジングオイルを塗布
→ マッサージで皮脂を優しく浮かせる
③ 丁寧なシャンプー&トリートメント or 薬浴
→ 洗浄したお肌と被毛をコーティング
④ 仕上げの保湿ケア
→ 皮膚バリアを守り、再発予防
最初にあげた画像の子も、上記の手順でケアしてあげた結果、以下のような仕上がりになった。
見比べてみよう。
まとめ
耳のフチの皮脂カスって、一見すると大したことないように見える。
でも、放置すると皮膚が硬くなったり、ブローの仕上がりが落ちたりと、実は美容と健康の両方に影響する小さな落とし穴。
私たちは、そんな“見落としがちな変化”にも気付ける目を大切にしている。
ご自宅でも、愛犬の耳のフチを軽く指で触ってみて、皮膚が厚くなっていないか、ベタつきがないか、色の変化がないかなどをたまにチェックするのも大事になる。
もし気になる点が見つかった場合は、次回のトリミング時にぜひご相談してほしい。
小さなケアが、大きなトラブルを防ぐ第一歩。
愛犬の仕上がりと皮膚の健康を両立するために、日々取り組んでおります。