1. サマーカットって実は…
夏が近づくと『サマーカットで!』というオーダーが増える。
昨今の夏は死ぬほど暑いもんね。
犬さんもしんどそう。
分かる!
なんとか快適にしてあげたい。
でも実は…
サマーカットって、プロの間でも意見が分かれるカットなんです!
もちろん定番カットとして人気はある。
でも、トリマーとしてはちょっと複雑な気持ちになることも。
今回はその理由を、分かりやすく解説していきます!
2. トリマーがサマーカットをおすすめしにくい理由
2-1.「毛を短くする=涼しい」は本当?
トリマーあるあるだけど、夏場、飼い主さまとお話ししていると「暑そうだから短くしてあげたいの!」という相談を週に10回は受ける。
いや、さすがに週10回は盛ったが(笑)、とにかくめっちゃ多い!
さて、多くの飼い主さまの疑問といえば、
「毛を短くすると涼しいのか?」である。
どうでしょう??
その答えは「涼しくなる」で正解!
犬が重篤な熱中症になった時、冷水で身体を冷やすことが応急対応のひとつだ。
人と同じだね!
このことから、犬も体表を冷却することは体温を下げるのに有効と考えて間違いない。
とはいっても、犬の体温調節の仕組みって、意外と知られていない気がする。
これ、犬の健康管理で、結構大切な視点です!
体温調整の仕組みを知ると「あれ?別にサマーカットって必要なくね?」ってなるかもしれない。笑
2-2.犬の体温調節と被毛の役割を知ろう
「犬、汗かかないんだってよ。。。」
こんなような話し、一度は聞いたことあるのではないだろうか。
「じゃあ、どうやって体温を調節してんの?」って話しだけど、ちゃんと犬なりの発汗を必要としない体温調整システムが備わってる!
神秘的!
① 犬の体温調節は“パンティング”がメイン!
犬は人間みたいに全身から汗をかけない。
(例外もある)
唯一、足の裏(肉球) に汗腺はあるんだけど、体温調節で使うには頼りなさすぎる!笑
じゃあ、どうやって熱を逃しているのか?
その答えが 「パンティング(ハァハァする呼吸)」 だ。
キッズに説明したら、たぶん『犬の呼吸!壱ノ型!ハァハァ!!!』ってやると思う。笑
こんなやつ↓
鬼滅はさておき、パンティングっていうのは口の中の水分を蒸発させて、その気化熱で体温を下げる方法!
人間が体表で汗をかいて熱を下げるのと同じ原理。
つまり、「毛を短くする=涼しい」は正しいけど、犬にはそもそも体温を下げる術があるってことを覚えておこう!
2. 被毛は「断熱材」になる!
近頃の住宅は高気密・高断熱が売りだよね。
家の中の熱を逃さず、外の熱の影響を受けにくい
——まさに、現代の快適技術の極み!
実は、被毛はそれと同じような役割を持ってる。
「毛皮が暑そう」と思われがちだけど、ちゃんと被毛には 「断熱材」 の効果が備わっているよ!
✔ 冬は暖かさをキープ
✔ 夏は外からの熱を防ぐ
つまり、そもそも熱を伝えにくいというわけ。
被毛にはメデュラと呼ばれる謎の中心組織がある。
この組織があることで、皮膚への熱伝導を和らげてくれているのではないか?と考えられているのだそう。

なので、夏場にサマーカットで短くしすぎると、直射日光や地面の熱だけでなく、紫外線をダイレクトに受けるリスクに晒されてしまう。
特にダブルコートの犬(柴犬・ゴールデン・ポメラニアンなど)は、アンダーコート(内側の毛)が自然に抜けることでその季節に適した体温調整をしている。
夏前と冬前に脱皮のごとく毛が抜けるのは、実は季節に合わせた被毛に生え変わっているというわけだ。
だから、犬好きなら抜け毛を厄介者扱いしちゃいけない。
犬たちなりの生理現象だから。
脱線するけど、抜け毛が気になるならうちの店にぜひ来て欲しい!
僕、抜け毛の処理が得意なので!笑
さて、とにかく、無理に短くすると逆に暑さに弱くなる可能性があることは理解してもらえただろうか?
ここまでをまとめると「犬の被毛はめっちゃ理にかなってる」ってことだ!
ちなみに、毛を短くしすぎると「毛が生えにくくなる」可能性もある。
これも意外と知られていない盲点なんだけど…
この話はまた後日、じっくり掘り下げるとしよう!
2-3. サマーカットが適している3つのケース
犬の生理機能がどうあれ、以下ケースは季節関係なくサマーカットが推奨されることが多いよ。
1つずつ見ていこう!
① 高齢犬や介護が必要な犬
高齢犬や介護が必要な子にとって、被毛の管理は意外と重要なポイント!
飼い主さんの負担を減らすためにも、短くしておいた方が吉!
② 皮膚病の治療が必要な犬
犬の皮膚病治療は根気との戦いだ。
特に、お家での薬浴は乾かすのを含めて本当に大変!
毎日やってるトリマーの僕でさえ大変だと思うから、慣れてないと相当な負担になるはず。
だからこそ、洗いやすく・乾かしやすくするために短くするのが有効!
しかもちゃんと乾かさないと、毛玉になったり別の問題も出てきてしまうからね。
本当に大変なら、担当のトリマーさんに相談してみよう!
多くのサロンが通常のコースより利用しやすい「シャンプーのみ」というメニューを用意しているはず!
ダラダラと治療が長引いて病院代がかさんでしまうより、サロンを有効活用して短期間でお肌を良くしてあげてほしいと思う。
③ 毛玉がひどい場合
最近、動物系のバラエティ番組が増えて、ペット業界のリアルを知る機会が増えたよね。
ありがたい!
中でも、相葉ちゃんのボランティアトリミングの姿を見て、『あんなに毛が絡まることがあるの!?』と驚いた人も多いはず!
相葉ちゃんがトリミングしている子たちは特殊だけれど、
例えば、
・何ヶ月もトリミングしない
・抜け毛を全く処理せず放置
このような状況下で発生する毛玉はかなり頑固!
ブラシでは解くには日が暮れるレベル!
犬さんに負担をかけないためにも、バリカンでリセットせざるを得ないことが多いです。
この場合、当然だが「可愛く仕上げてほしい」というご要望にお応えできないケースがほとんどなので悪しからず!
これに共感できる方は動物の気持ちをちゃんと考えられる、優しい判断力の持ち主なのですが、中には……
おっと、これ以上は言わないでおこう!
心の中でそっと察してほしい……。
4. 短くしないでも涼しく!夏のトリミング対策
『犬の被毛の役割は分かった。けど、やっぱり短くしたいなぁ』
そう思うのはごもっともでしょう。
「でも、安心してください!ありますよ!涼しくする方法!」
① お腹や内股だけ短くする
犬は暑さを感じるとひんやりする場所に伏せ、お腹を冷やすことがある。
私たちも寝ている時、冷たい場所を探して寝返り打つよね。
なんとなく犬の気持ちが分かるのでは?笑
それから、犬の内股には素人でも脈を取れるくらい太い血管が通ってる。
人も暑い時、動脈を冷やせって言うよね。
犬さんも同じで、その内股付近を冷やしやすいように部分的に短くしてあげるのは有効的!
さらに、
・保冷剤をタオルで巻いて使ってあげる
・ひんやりパッドなどを敷いてあげる
などの工夫をしてあげれば、もっと快適でしょう!
ただし、冷やし過ぎには注意しよう!
② 長めに残すカットを行う
被毛の機能性は保持できる長さまでカットするという手もある。
短くすれば、その分エアコンの風が地肌に届きやすくなる!
でも、短くしすぎると被毛の役割を奪っちゃう…
このバランスが難しいところ!
被毛の機能性を保持できる長さというのは、皮膚を十分保護でき、断熱効果を保つことができる長さと、僕は捉えています!
もちろんこの限りではないです。
犬により毛質や生え方が異なるため、「この長さです!」とは言い切れないけど、僕が現場で目安にしている長さはある!
毛が立ち上がるポメラニアン、プードルなどの犬種は少なくとも1.5センチ以上は必要と思う。
地肌が見えないくらいの長さの平均が大体1センチなので、5ミリの余裕を持たせ換算してる。
あくまで僕個人の感覚と経験ベースの基準なので、気になる方は担当のトリマーさんにも意見を聞いてみてほしい。
一方、毛が寝るタイプのチワワやダックスなどの犬種は、背中の毛をわざわざ立ち上げて切る必要がない。
背中は寝かせたまま、お腹・お尻・胸・首周りなどの飾り毛をすっきりしてあげるだけで十分涼しげな印象に変わります!
③ 毛の長さはそのままで“すいてボリュームダウン“する
トリミングに使うシザーは大きく分けて2種類ある。
ストレートシザーとセニングシザー。
ストレートシザーは毛をまっすぐ切るのに適していて、セニングタイプはいわゆる「スキバサミ」のこと。
挟んだ毛に間隔を空けながら切ることができる。
つまり毛量を落とすのに使う!
この性質を利用することで毛の長さは変えず、自然な見た目のままボリュームだけを調整できるってわけだ!
とても便利!
そうして生まれた毛と毛の広いスペースは、空気が通り抜けやすい。
あと、毛の量を減らすということは絡まりにくくもなるので、毛玉の予防にもおすすめだ。
色々メリットが多いので、個人的にとてもおすすめしている手法です!
④ 抜け毛の処理をしっかりやってもらう
さまざまな解決方法を提案してきたが、ベースはこれにつきる!
換毛期にしっかり抜け毛を取り除かないと、毛が分厚くなって風通しが悪くなり、逆に暑いかもしれない。
たまに、元の毛並みからボソボソととした毛がはみ出ている柴犬を見ることがある。
心当たりある人いるんじゃないですかね?笑
実は、トリマーがそれ見ると、
『アンダーコート詰まりまくってる…!抜きたい…!』ってなる!笑
もはや職業病ですね!笑
でも、そのような抜け毛の状態の場合、もう本当に、びっくりするくらい抜ける!!!
キリがない!笑
こうした過剰な抜け毛は皮膚トラブルの原因になることもあるから、なるべくこまめにケアしたいところ。
カットの決断は、まずはシャンプーコースでしっかりと抜け毛の処理をやってもらい、愛犬さんの様子を観察してからでも遅くはないんじゃないかな、と思います。
⑤ もしサマーカットをするのであれば
それでもどうしてもサマーカットをしたい方は、夏の環境を対策すれば問題ないと僕は考えている。
最後に、僕が考えるサマーカットでの過ごし方を提案します。
*皮膚を保護するためにUVカット機能付きの洋服を着せよう
→ 通気性の良さから薄手の服を着せていることがあるが、念のためUVカットできるものだと安心。
*しっかり虫よけ対策しよう
→ 皮膚までの距離が短いため、蚊や寄生虫に刺されるリスクがある。
*お散歩は日が出ていない時間帯に行こう
→ 日照時刻を除くと朝は5時前後、夕方は19時以降がベストタイミングかもしれない。
*冷やしすぎないようにしよう
→ どんなに外が暑くても、エアコンの効いた部屋の中で裸でいれば人でも凍える。犬も同じだ。
5. まとめ:サマーカット、やる前に考えてみよう!
サマーカットについて、長々アツく語ってしまいましたが、いかがでしたでしょうか?
サマーカットのメリットとデメリットだけでなく、神秘的な犬の生理機能の面白さも伝わったら嬉しい!
もし、サマーカットをご希望の飼い主さまがたら、『短くしたい理由』を聞かせてもらった上で、色々とアドバイスをするのが私たちトリマーの役目だ。
毛を短くするのは、一瞬。
でも、元に戻すのには時間がかかる!
だからこそ、私たちとトリマーとしっかり相談して決めていきましょう!